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doLuck jazz DLC-19
2,400円(税別)
12月19日発売


 
Isn't It Romantic? / Mieko Hirota

弘田 三枝子(vo) 北島 直樹(p)
仲石 裕介(b)
長谷川 ガク(ds)

2018年6月1,2日 前橋市・夢スタジオで録音



■収録曲(試聴できます)
01 When You Wish Upon A Star
02 Black Coffee
03 Alfie
04 Isn't It Romantic?
05 All Of Me
06 But Not For Me
07 Laura
08 One Note Samba
09 The Things We Did Last Summer
10 Hi-Fu-Mi-Yo
11 The Good Life
12 星に願いを
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Liner Notes

ヴォーカル界の至宝、レジェンド・シンガー、弘田三枝子の「原点回帰」アルバム

 今や日本のヴォーカル界の至宝と言っても過言ではないレジェンド・シンガーの弘田三枝子がジャズ・アルバムを携えて戻ってきた。ジャズ・アルバムとしては2006 年発売の『弘田三枝子JAZZ COLLECTION』(CD8 枚組BOX)にニュー・アルバムとして入っていた『MICO JAZZING』以来12 年ぶり、まさに「ミコ・イズ・バック」である。弘田三枝子と言えば7 歳の頃から立川の米軍キャンプでジャズやポップスを歌いながら幾多の経験を積み重ね、1961 年、14 歳の時にヘレン・シャピロのデビュー曲「Don’t Treat Me Like A Child」の日本語版「子供ぢゃないの」でデビュー、1965 年7 月、なんと18 歳で日本人歌手として初めてニューポート・ジャズ・フェスティバルに出場、ビリー・テイラー・トリオをバックに堂々と歌い切ったのである。当時の記録はスタジオ録音であるが同メンバーで『Miko In New York』というアルバムに収録されている。あのエラ・フィッツジラルドから天賦の才能を認められ、養女に請われたという逸話も残っている。また、歌謡界のNo.1 歌手であった美空ひばりもジャズやR &B、ソウル、ポップスを歌う彼女は天才だと認めていたと言う。更にサザン・オールスターズの桑田佳祐さえも、弘田三枝子をモチーフに彼女を讃える「MICO」という曲を作っている。
 そんな抜群の歌唱力を持つ弘田三枝子は、ともすれば、1969 年「人形の家」で第11 回日本レコード大賞歌唱賞を受賞して大ヒットしたことで、一般には歌謡・ポップス歌手のイメージが強いが、本人も語っている通り、彼女のルーツはジャズである。1978 年にベースのリチャード・デイヴィスがプロデュース、ドラムスのビリー・コブハム、ピアノのスタンリー・カウエル、トランペットの日野皓正、サックスのジョー・ファレルという豪華メンバーで吹き込んだ『Step Across』は今でも彼女の最高傑作と信じて疑わない。特に私の大好きなドラムスのビリー・コブハムをバックに歌う彼女のメリハリの効いた自由奔放さは筆舌に尽くし難い凄さだ。彼女をリスペクトする真のジャズ・ヴォーカル・ファンやミュージシャンは数多く、前出の限定盤『JAZZ COLLECTION』は驚異的高値で取引されている。本作はそんな自身の人生を振り返り、その総決算として全身全霊でジャズに向き合った、まさに、彼女のジャズへの「原点回帰」と言ってもよい珠玉の逸品となっている。この作品はジャズ・ピアノの名匠、北島直樹の抜群のアレンジとツボを得た煌めくピアノに支えられ、程よい空間のジャズ・クラブで、グラスを傾けながら、静かに落ち着いて聴くにふさわしいアルバムである。弘田三枝子は何でも歌える、幅広い技巧を持った実力派の歌手であるが、ポップス系の歌の数々で聴かれるダイナミックでパンチの効いたいつもの歌唱は抑え気味で、肩の力を抜いた控えめの歌い回しがなんとも心地よい。年輪を重ね、枯淡の境地に至った弘田三枝子の真髄が自然体で表現されており、ジャズ歌手としても、彼女は別格の存在であることを世に示す大人のジャズがここにある。しかもアルバム・タイトル通り、全体を通してなんともロマンティックな作品に仕上がっているのだ。彼女と同世代のオールド・ジャズ・ファンだけでなく、ヤング・ジェネレーションにもぜひ聴いて頂きたい実に味わい深きワン・アンド・オンリーなアルバムであると言えよう。 メンバー紹介
 バックメンバーのピアノの北島直樹は1955 年、静岡生まれ、名匠と言うにふさわしいベテラン・アレンジャー、スタジオ・ミュージシャンであるが、ピアノ・トリオ、ピアノ・ソロでも大活躍。ミュージシャンの信頼も厚く、近年はティートック・レコーズから数々の意欲的名アルバムをリリースしている。ベースの仲石祐介は1986年、大阪出身、現在、東京都内、横浜を中心に自身のグループやスタジオ・ミュージシャンとして活躍中。自己名義のリーダー・アルバムもある期待の新星である。ドラムスの長谷川ガクは1978年、東京生まれ、バークリー出身でジャンルを問わず、東京を拠点に活躍しているが、近年では、アジア、北米、ヨーロッパのジャズ・フェスティバルにも出演する実力者である。そんな輝く、フレッシュなピアノ・トリオをバックに弘田三枝子はジャズで自己の人生を振り返り、未来への夢を語っている。録音はdoLuck Jazzの拠点、前橋・夢スタジオ。
楽曲解説
 収録曲は全12 曲。「When You Wish Upon A Star」から始まり、同曲の日本語ヴァージョンで終わる。全12 曲中、「Hi-Fu-Mi-Yo」以外全てスタンダードで、それも馴染みの名曲ぞろい。
 冒頭の「When You Wish Upon A Star」(ディズニー映画[ ピノキオ] の挿入歌)では北島のしっとりとしたピアノのイントロに導かれて、弘田三枝子のジャズ人生への願いが色濃く表現されており、この1 曲でアルバムの印象がピタリと決まる。
 続く「Black Coffee」は1948年にサラ・ヴォーンのために書かれた曲。“恋は使い古しのホウキのようなもの”と表現、ブラック・コーヒーを飲みながら失恋感情を癒す女の情念を吐露した渋い名曲、数多くの名歌手に歌いつがれてきたが、弘田三枝子のビターでソウルフルなコーヒーの味は如何?
 バート・バカラック作曲の「Alfie」は彼自身、最高傑作と認めるとってもお洒落な曲だ。“生きるとはどういうこと?”と答えがあってない人生の永遠のテーマを表現している。全身全霊でこの難曲に挑戦している彼女の姿が浮かぶようだ。
 アルバム・タイトルの「Isn’t It Romantic?」は、リチャード・ロジャース&ロレンツ・ハートの1932年作、ミュージカル映画「Love Me Tonight」の挿入歌である。オードリー・ヘップバーン主演の映画「麗しのサブリナ」でも使用されたロマンティックの極みな恋の歌である。軽快でグルーヴィーな表現は彼女の真骨頂である。とても幸せな気分に浸れる。
 「All Of Me」はセイモア・シモンズ&ジェラルド・マークスの1931年作、“私の全てをどうして奪ってくれないの?”というトーチ・ソング(失恋歌)。リリカルな北島のピアノに導かれ、徐々に軽快でグルーヴィーな弘田流のフィーリングに包まれる。
 「But Not For Me」はジョージ&アイラ・ガーシュインの1930年作、ミュージカル『Girl Crazy』で初演。“彼はもう私のものじゃない”と歌われる。ピアノのスローな出だしから、ベースの軽快な4 ビートに乗って、これぞ弘田三枝子ジャズとも言うべき抜群の歌唱力を示す。ここでは仲石裕介の強靭なベースが大活躍。
 続いての「Laura」は1944年、ジョニー・マーサー&デイヴィッド・ラクシン作の米映画「ローラ殺人事件」の主題歌、原曲はバラードで実に滋味豊かな名曲であり、歌手にとっては難曲である。ここでは原曲通り、スローから入り、途中からラテンリズムに変化するという離れ業をやってのける。
 弘田三枝子の奔放で独特なリズム感を示しながらこの雰囲気を持続させジョビンの名曲「One Note Samba」へと移る。“あなたがいるから私がいる”とサンバ・リズムで歌う。ここでは、彼女の独壇場と言えるスキャット・プレイが抜群に光っている。
 「The Things We Did Last Summer」は1946年、サミー・カーン& ジュール・スタイン作のこれまた滋味豊かな名作バラード、ここでも彼女は情感たっぷりに“過ぎし夏の想い出” と自分の過去の人生を重ね合わせ、曲の真髄を見事に捉えて表現する。歌に人生が出る曲の一つだ。
 「Hi-Fu-Mi-Yo」は2015 年リリース、合田道人作詞・作曲の日本語曲「ひいふうみいよう」の英語ヴァージョン。ウォーキング・ベースに導かれ「少しビールを頂くわ、飲まずにお話し出来ないわ。...」と歌い出す。想い出の数を数えながら歌う弘田三枝子。歌いながら何を想い出しているのだろうか。
 再び軽快でグルーヴィーな「The Good Life」。1962年のフランスの歌で、翌年トニー・ベネットが英訳して歌い、世界的スタンダードになった。“満ち足りた人生、素晴らしき人生”と歌われる。ここでも彼女のグルーヴ感は桁違いだ。
 最後は意表を突く「When You Wish Upon A Star」の日本語ヴァージョン。北島直樹とのデュオで、彼女の今の思いを、全身全霊を込めて聴く者に伝える感動的な名唱である。彼女の人生をかけたジャズへの思い、自分のジャズを愛してくれるファンへの思い、これから彼女の歌を聴いてファンになってくれる若い世代への思い、いろんな思いが凝縮されている。本作はジャズ・シンガーとしての弘田三枝子が今でもトップ・ランナーであることを世に示すアルバムである。
(2018.11.22. 記:後藤誠一)