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doLuck jazz DLC-7
2,400円(税別)
1月20日発売


 
Macky!!!! / Masahiro Makihara Quartet

牧原正洋(tp,flh)
外谷東(p)
菅原正宣(b)
金井塚秀洋(ds,vo)

2015年10月13,14日 前橋・スタジオ8で録音

■収録曲(試聴できます)
01 Cloudy Moon
02 Ceora
03 Silent Beach
04 Yo-koso
05 The Rose Tattoo
06 Sweet Love Of Mine
07 Itʼs You Or No One
08 Up Jumped Spring
09 Dranker
10 Do You Know What It Means To Miss New Orleans
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Liner Notes

Man From The North. =北から来た男=
突然、寂寥感のともなう熱い感覚に包まれた。
マッキーこと、トランペットの牧原正洋をリーダーとするカルテットのファーストアルバムである。
‘50年代後半から’60年代にかけての、フレディ・ハバードがいて、リー・モーガンがいて、
ウッディ・ショウがいて…いつの間にかどこかへ忘れてきてしまった、
トランペットがリードするあの独特の匂いのする空気を感じたのだった。
当時と違うのは、あの突き抜けるような荒々しさをおさえ、
それまで裏でじっと忍んでいたに違いないロマンチックなエッセンスを引き出し、
迸るようなフレーズの中にも情緒感の滲むマッキー独特の世界になっている事である。
1971年、岩手県宮古市生まれ。
北国の冬の厳しさは、繊細な感覚を、豊かな感情を育むものらしい。
マッキー独特のロマンの香りは、きっとその生まれ育った北国で培われたものに違いない。
岩手県と言えばラグビーの盛んなところ。マッキーも幼い頃からラガーを目指していたそうだ。
そのラガーを夢見る少年が「バラの刺青」を、フレディ・ハバード自身のライブ演奏で聴いた時に
彼の音楽心に火が点いたのだと言う。かなりの衝撃だったらしい。
フレディ・ハバードで、「バラの刺青」で、北の宮古で少年マッキーが…
この重なりにいささか因縁じみたものを感じないでもない。
今のマッキーの日々のプレイに触れると、さもありなんと思うからである。
知己であるかないかは別にして、音楽家とはそのプレイを通しての付き合いだと思う。
マッキーの音楽的ルーツを知ることも、
その変化を確かめながらこれからのマッキーを聴き届けることも
ファンとして付き合うことの大いなる楽しみだ。
このアルバムはそんな“北から来た男”の楽しみを大きく膨らませる興味深い1枚である。
もう一つ特筆すべきはメンバー、外谷 東(pf)、菅原正宣(b)、金井塚秀洋(ds)である。
彼らとマッキーとはすでに15年にも及ぶコンビで、
マッキーの世界をとことん探り創り上げてきた不動のバックボーンである。
聴くほどに味わいが増すのは、彼らの腕の冴えによるところも大きい。
牧原正洋カルテット
さあ、その真ん前で聴いて欲しい…

浦山 隆男


■演奏曲について
1) Cloudy Moon
(牧原正洋)
 いきなり首根っこを押さえ込まれたかのような衝撃である。
 台風が関東に接近中との情報を受け、夜のジャズフェスティバルに向かう直前の演奏への昂ぶりと、天候への不安との複雑な心理状況を10分ほどで書き上げたというマッキーの秀作。緩急をつけた展開が描写的というかドラマチックで、いかにもマッキーらしいナンバーであり、演奏である。マイルスを思わせるクールなトランペットソロを支えるバックとのコンビネーションが小気味いい。今にも降り出しそうな雲行きと見え隠れする月‥聴いていて思わず窓の外を確かめてしまいそうだ。
2) Ceora(Lee Morgan)
 天才トランぺッター、リー・モーガンのボサ・ノヴァ調の作品。マッキーはフリューゲルホーンでペーソスを漂わせながらしみじみと聴かせてくれる。そうだ、このナンバーはこの方がいい。
 途中、外谷のピアノソロの終わりから、マッキーが外谷のピアノのフレーズを受けての掛け合いが4度ほど出てくるが、思わずニヤリとしたくなる。同時録音でなくてはできないシャレであり、長年のコンビネーションがあるからこその呼吸である。こういう隠れた楽しみがあるから堪らない。
3) Silent Beach(牧原正洋)
 夏のシーズンを終えた浜辺ほど寂しいものは無い。が、離れがたい何かがある。
 そんな心の機微を故郷、岩手県宮古市の浄土ヶ浜に託した23年前のマッキーの処女作。美しいメロディをなぞるフリューゲルホーンが切ない…途中、夏のビーチの喧騒を甦らせるかのようにテンポアップし、再び静かな海に戻る…それは古い話で恐縮だがクロード・ルルーシェの映像(’66「男と女」)がふとよぎるほど美しく、独特の世界感がある。
 “北から来た男”が抱いていた思いをひしひしと感じさせるナンバーであり、演奏である。
4) Yo-koso(牧原正洋)
 2007年6月、千葉県市原市のライブレストラン「キャリオカ」に出演した際、聴きに来られていた 当時の市長佐久間隆義氏との、市原市をイメージした曲を、との約束のもとに書いたオリジナル・ナ ンバー。
 タイトルも佐久間氏が命名。「Yo-koso」は日本語での市原市へ“ようこそ!”の意と、「キャリオカ」のママ“陽さん”のお名前とをかけたシャレ。この軽妙さはエピソードとして「Yo-koso」の魅力になりそうだ。
 市原市へ向かう高速道路を突っ走るクルマの中での所在なさと、たそがれに染まり走り去る景色のやるせなさをマイナーキーで、サビ部分の華やかな「キャリオカ」での雰囲気をメジャーキーで表わしたという。前曲「Silent Beach」同様、マッキーの巧みな情景描写の中を彷徨う楽しいナンバーである。
5) The Rose Tattoo(Harry Warren)
 フレディ・ハバードのライブ演奏を聴いてトランぺットを目指すと同時に、プロになったら必ずレコーディングを、と心に決めていたトランぺッター“マッキー”のルーツとも言えるナンバー。
 フレディ・ハバード同様、ハーマンミュートでの超スローテンポで演奏。あえて演奏しにくいキーに変え(E♭マイー)、アドリブでの音数を抑え一音入魂ジリジリするような曲想を大切にしたという。身じろぎもせず、聴き入ってしまう。
 これは‘55年のアメリカ映画「バラの刺青」のテーマのように思われているが、実際には映画に触発されて書かれたものらしく(作詞:ジャック・ブルックス、作曲:ハリー・ウォーレン)、ペリー・コモが歌ってヒットしたために主題曲かのように広まったという。
6) Sweet Love Of Mine(Woody Shaw)
 フレディ・ハバードのライバルともいうべきトランぺッター、ウッディ・ショウのジャズ・ボッサの名曲。ジャズ喫茶などでもよくかかり、演奏するプレイヤーも多い。
 歌うようなマッキーのトランペットは明るく洗練された演奏でノリがいい。が、どこかに陰りのようなものを感じるのは晩年不遇だった作者ウッディ・ショウによるものなのか、演奏者“北から来た男”マッキーのペーソスによるものなのか━絶妙な味わいがある。ジャズクラブでリクエストが多いというのはうなずける。
7) It’s You Or No One(Jule Styne)
 これは’48年のアメリカ映画『Romance On The High Seas』に「It’s Magic」と同じく使われ、主演のドリス・デイが歌ったいわゆる歌もの、スタンダードナンバー。
 ジャズでも古くはドナルド・バードやリー・モーガン時代のジャズ・メッセンジャーズでもお馴染。ここでもそんファンキーな匂いを残しながらの、ドライブ感のある快適なプレイが楽しめる。ライブではオープニングかラストにやることが多いと言う。ある意味それだけ彼らの象徴的なナンバーと言える。
8) Up Jumped Spring(Freddie Hubbard)
 フレディ・ハバードがこんな軽快なワルツを━まさに春を思わせるようなナンバー。
 もともとフレディ・ハバードはメロディアスなプレイヤーと言われているが、マッキーのフリューゲルホーンも可愛らしく大いに春を歌っている。いや、フリューゲルホーンに限らずベースもピアノも可愛らしく歌っており、このアルバムの中でもちょっと変わった風を起こしていて楽しい。
9)Dranker(牧原正洋)
 酒を呑むのも楽しいが、呑んだ酒がいい音楽になるのはもっと楽しい。
 泥酔して朝起きたら、キーボードの上に殴り書きされた五線紙があり、演奏してみたら好きなイメージの曲だった。まったく曲を書いた覚えがないが、筆跡は自分のものだった。
 マッキーはこの「ドランカー」ができた経緯をこう言う。学生時代のことらしい。ファンキーな学生時代を送っていたのに違いない。こんな快曲が書けるのなら酔っぱらいも悪くはない。
 マッキーにとってこのナンバーは、7年前の「The Joyful Brass」に続いて2度目のレコーディングである。
10) Do You Know What It Means To Miss New Orleans(Louis Alter)
 ‘47年のアメリカ映画『New Orleans』に使われた、ニューオールリンズへの郷愁を歌ったトラディショナル・ジャズのいわばスタンダードナンバー。映画はビリー・ホリディが唯一映画に出演し、しかもルイ・アームストロングとの共演と言う垂涎もの。
 マッキーもトラッドの、しかもニューオールリンズのフィーリングを出すために他のナンバーとリップコントロールを変えて演奏すると言う気の入れよう。何とも言えない郷愁に満ちたいい演奏である。
 アルバムを聴き終えたときハッピーな気持ちになって欲しい、という願いを込めてのラストナンバーだそうだ。確かに、どこかに懐かしさが残りいい気分になった。

■メンバー・プロフィール
牧原正洋(trumpet, fluegelhorn)/Masahiro Makihara

岩手県宮古市生まれ。武蔵野音楽大学卒業。中学生の頃よりジャズプレイヤーに憧れ、大学在学中よりライブ活動を始める。卒業後、花岡詠二(cla)、谷口英治(cla)、酒井潮(org)、等のグループやオルケスタ・デル・ソル、角田健一ビッグバンド、宮間利之&ニューハードオーケストラのメンバーとしても活躍し、数多くのジャズフェスティバルやNHK『セッション505』等の番組にも出演。現在、和田アキ子、EXILE、SMAP、八代亜紀、をはじめ多数のタレントサポートを行う他、自己のバンドやスタジオワークを精力的にこなしている。2006年にリットーミュージックから『はじめてのビッグバンド・トランペット編』を出版。6人編成のジャズブラスバンドJoyful Brassには1995年よりソロトランペット奏者として参加。
外谷 東(piano)/Tou Toya
1963年兵庫県生まれ。大阪、福井、新潟、東京で育ち、埼玉県在住。5才より、クラシックピアノを始める。大学時代ジャズと出会い、ジャズピアニスト田村翼氏に師事。ビ・バップを基本に、黒人のオーソドックスなジャズピアノを学ぶ。19才でプロ入り、ダンスバンド、ホテルラウンジ、ジャズクラブ、タレントのバックバンド、レコーディング等、あらゆる演奏、作曲、アレンジを手掛ける。1999年、リーダーCD『Distance』を発表。現在、自己のピアノトリオ、牧原正洋カルテット等で活動中。また、ボーカリストとの共演も多数、その信頼も厚い。毎年開催される、さいたま新都心ジャズボーカルコンテストの伴奏を、第1回から続ける。
菅原正宣(acoustic bass)/Masanobu Sugawara
1964 年 大阪府出身。生まれた時から常にジャズが鳴っている環境に育ち、アルトサックスプレーヤーであった父にジャズの手ほどきを受け、1992 年に上京。2004年 映画『十三通目の手紙』のサントラ盤 録音に参加。2006年 菊地康正(ts,fl『) MY SPANISH KEY』の録音に参加。ジャズ以外では、日本では数少ないグラン・オーケストラである「タンゴ・ポルテニョス・ヨコハマ」にも創立時より在籍。現在、都内及びその近郊にて演奏活動中。
金井塚秀洋(drums)/Hidehiro Kaneizuka
1966年高崎市生まれ。 高校時代 友人と結成したロックバンドでドラムスを始める。大学時代はモダンジャズ研究会に所属。そこで先輩の演奏に激しく感銘を受ける。在学中より約一年半小山太郎氏に師事。スピードのあるダイナミクスレンジの広いドラマーを目指し都内及び近郊のジャズクラブで活動中。横浜ジャム音楽学院講師。