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doLuck jazz DLC-6 2,400円(税別) 11月11日発売 |
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Producer's Notes 朝、目覚めとともに聴くと、気分の隅々にまで新鮮な酸素が充ちていくように感じる。夜、 眠りにつく前に聴くと、強張っていたココロとカラダが解かれていく気がする。仕事が煮詰 まった時に聴くと(今のワタクシがまさにその状況ですが)、淀んでいたヤル気がフッと軽く なって、次にやるべきことに向かっていける…まるで万能サプリのようなアルバムができあ がった。最近、日本のジャズシーンにおいてじわじわと注目を集めているギターの佐津間純と ベースの若林美佐のデュオによる『Weaver of Dreams』だ。 ソロは別として、デュオというのは音楽を演るうえで最小限のユニットである。しかも今回 は6本弦と4本弦の弦楽器オンリーという編成だ。そう聞くだけで地味~な作品と思われるか もしれないが、そうでないのはアルバムを聴いていただくとわかるとおり。シンプルでクリア でありながらも芯の太いサウンドの佐津間のギターと、スインギーで力強いビートを刻む若林 のベースからは、とてもゆたかな“歌”が聴こえてくる。録音にあたって佐津間は「ギターとベー スという編成となるとどうしてもギターが前に出てベースが支えるという構図になりがちで、 ギターの音が沢山聴こえてくる作品になります。しかしこの作品に関してはベースのサウンド も前面に出てくる場面(ベースがメロディーを弾いたり、ユニゾンの曲があったり、ベースが弓 で演奏する場面があったり、それぞれに一曲ずつソロの曲があったり… )も沢山作って、アルバ ム一枚を通してこの編成であるからこそ出来る作品作りを追求し、選曲、構成をしました」と 語っていたが、ミニマムなユニットであるからこその自由さ、自在な交歓が音楽のそこここに 散りばめられているので、聴くものを飽きさせない。 まずは演奏されている10曲を見ていこう。 How About You アルバムのオープニングを飾る明るくキャッチーなナンバー。一曲目にふさわしく2人の活 き活きとしたソロが展開される。 The Shadow of Your Smile いそしぎ。ギターのサウンドにとてもよく合うジャズスタンダード曲のひとつだと佐津間は 言う。普段からライブでも好んで取り上げている曲。イントロから佐津間の愛用する名器 Gibson Super400が鳴り響く。 I Let a Song Go Out of My Heart 偉大なるデュークエリントンの軽快なナンバー。ギターとベースのユニゾンではじまり、ソ ロの冒頭からいきなり始まる2人のスリリングな掛け合いが聴きどころ。 My Conception ジャズピアニスト、ソニー・クラークの曲。若林の美しいボウイング(弓を使った演奏)が楽 しめる。普段どちらかといえば裏方に徹するタイプのベーシストである若林だが、このアルバ ムでは要所要所でこの曲のようにその暖かく力強いベースサウンドが前面にフィーチャーさ れ、作品全体をバランス良く構成する上でとても重要な役割を果たしている。 Peace of Mind 佐津間によるソロギターピース。"安らぎ"と名付けられた佐津間のオリジナル曲。普段佐津 間は名器Gibson Super400(1968年製)をメインで使用しているが、このレコーディングのため に佐津間の師であり日本を代表するジャズギタリスト岡安芳明氏からK.Yairiのアコースティッ クギターを貸り、2曲アルバムの中で披露している。その中の1曲。優しく丁寧な佐津間のソロ ギターが堪能出来る。 The Corner 佐津間のオリジナル曲。佐津間の憧れるジャズギタリスト、ケニー・バレルに捧げた曲。イン トロのリフからすでにブルージーで洗練された都会的なムードが溢れ出す。 You Don't Know What Love Is 若林のみによるソロベース曲。このアルバムを制作するにあたり1曲だけ完全なソロ演奏が 聴きたい!と佐津間が若林に打診したという。おなじみのスタンダードナンバーを力強く丁寧 にメロディーを紡いでいく。若林の音色を存分に堪能出来る。 Weaver of Dreams タイトルを訳すならば"夢を紡ぐ人…"。アルバムのタイトルでもあるこの曲、佐津間と若林に とって"夢を紡ぐ人"とは、偉大なるジャズの巨匠たちのことである。彼らの音楽はいつでも夢 がいっぱいに溢れている。彼らへの憧れ、尊敬の想いが込められている。 Blues for Haru 佐津間のオリジナル・ブルースナンバー。佐津間、若林共に親交のあったジャズベーシスト 故高道晴久氏に捧げた曲。若林の力強いウォーキングベースで幕を明け、ギターが静かに入っ てくる。 Dear My Friend アルバムを締めくくるにふさわしい可愛らしいナンバー。日本を代表するジャズギタリスト 岡安芳明のオリジナル曲。佐津間は K.Yairiのアコースティックギターをプレイしている。 ちなみにこのアルバムの制作が決まってすぐに佐津間はこの曲がこのアルバムに絶対に フィットすると思っていたという。確かにこの曲を録り終えると同時に「ラストの曲」と主張し ていた。師の曲を師のギターでプレイする…佐津間にとってはこの上ない喜びであると同時 に、このレコーディングに臨む気合いは相当なものであったに違いない。 プロフィールを見るとわかるが、ふたりともほぼ同時期(2003年)にはアメリカで研鑽して いた。しかしふたりが出会ったのはそれぞれが帰国してからの2007年頃という。佐津間はその 時の印象を「見た目からは全然想像出来ない、ものすごく力強くスイングする素晴らしいベー シスト」だと語っている。彼はプロの演奏家として活動を開始して間もない頃で、若林も活動拠 点を東京に移したばかりの時期だ。自然とデュオで演奏するようになり、2014年からはユニッ トでツアーを組み全国に活動を広げつつある。 ギターとベースのデュオ・アルバムといえば、1972年に録音されたジム・ホールとロン・カー ターの『Alone Together』(Milestone)を上げる人が多いと思う。その3年後、『Alone Together』に 匹敵すると言われたアルバムが中牟礼貞則(g)、稲葉国光(b)の『Conversation』(TBM)から出 た。40年前、ジャズを聴き齧り始めた頃のワタクシは、管楽器もピアノもドラムも出てこないこ のアルバムに衝撃を受け、当時繰り返し聴いたものだ。それはまさにアルバム・タイトルどお りに中牟礼と稲葉の“楽器を通しての会話”をたのしむ体験で、それまでスピーカーに対峙して ジャズと向き合っていた聴き方が180度ひっくり返ったのであった。対決ではなく対話という 視点から演奏を聴くと成り立ちもよく見えてくるし、音の重なりをたのしめる。 今回、このアルバムの企画が持ち上がった時に頭に浮かんだのが、まさに『Conversation』で、 ワタクシは密かにこれを凌駕するものをつくろうと決意した。TBMレコードは音の良さでも評 判を呼んだが、今回は佐津間のギターをよく知る亀吉音楽堂(東京・大田区)の上田隆志氏にお 願いした。亀吉音楽堂は高音質で知られるスタジオだが、ふたりの会話を細部にまでわたって リアルにとらえ、リラックスした音楽のアルバムに仕上げていただけた。 佐津間・若林のふたりが慈しむように紡ぎだした音の連なりと、その音をとおしての会話は、 はたしてあの『Conversation』に迫ることはできたのだろうか。それは本盤を手にした皆さんの 判断に委ねなければならないが、プロデューサー的にはただいまのところ「やったぜ♪」という 気分なのであります。(平井清貴) 佐津間純(さつまじゅん) 1982年10月24日生まれ。神奈川県鎌倉出身。13歳でギターを始め高校生のときジャズに出会う。 土屋秀樹氏,道下和彦氏,岡安芳明氏等に師事。洗足学園大学ジャズコース卒業。バークリー音楽大学卒 業。大学卒業後プロの演奏家としてキャリアをスタートさせる。2006年度ギブソンジャズギターコン テスト『ジャズライフ賞』受賞。2009年雑誌「ジャズギター」で若手ジャズギタリストの一人として紹 介&インタビュー記事が掲載される。2009年大分県別府で行われた「Be-Beppu Jazz Inn」に出演。 2010年「佐津間純Trio」でモーションブルーヨコハマに初出演。2012年 後藤輝夫氏(ts)とのデュオ作 品「But Beautiful」がe-onkyoよりダウンロード限定で配信開始(この作品は第20回日本プロ録音賞ベ ストパフォーマンス賞を受賞)。2013年12月待望のデビューアルバム「JUMP FOR JOY/佐津間純」を リリース。2014年7月配信限定で発表した「BUT BEAUTIFUL/後藤輝夫&佐津間純DUO」がCDとして リリース。2015年11月実力派ジャズベーシスト若林美佐とのデュオアルバム「WEAVER OF DREAMS/佐津間純&若林美佐DUO」をリリース。現在、東京、神奈川を中心に全国で演奏活動をしてい る。オーソドックスなジャズギターのサウンドを貫き、ホットで美しい音色は、現在最も注目されてい る正統派ジャズギタリストである。 http://junsatsuma.com/ 若林美佐(わかばやしみさ) 大阪生まれ、奈良育ち。ベースらしいアコースティックな音色と力強いビートで高い評価を得ている 注目の女性ベーシスト。10歳でパーカッション、ドラムを始める。大学卒業後、ジャズベースに興味を 持ち、エレキベースを手にする。27歳の時に務めていた会社を退職し、アコースティックベースに転 向。同時にプロとしての活動を始める。2003年ニューヨークに渡米。滞在中は、アメリカ政府の主催す る9.11復興プログラムの一環として行われた学校、公共施設でのコンサートに参加。また、マンハッタ ンのジャズクラブにて、ジャムセッションのホストベースプレーヤーとして様々なミュージシャンと セッションを重ねる。2005年に上京。吉野ミユキ(as)、大友義雄(as)、向井滋春(tb)、高橋知己(ts)、ウラ ジミール・シャフラノフ(pf)等と共演。また、ノルウェーのミュージシャンとも交流を持ち、2007年よ り彼らの日本への招致を行う。2015年からは、ジャズを広く知ってもらうべく、「朝JAZZ」を主宰。現 在は関東を拠点とし、全国で精力的に演奏活動を行っている。ジャズベースを中村新太郎氏、バス ター・ウィリアムス氏に、クラッシック奏法を斎藤輝彦氏に師事。 http://www.misawakabayashi.com/ |