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doLuck jazz DLC-3
2,400円(税別)
11月19日発売


 
Yasuko meets Lewis Live at Mister Kelly's

中谷泰子(vo)
ルイス・ナッシュ(ds,vo)
多田恵美子(p)
荒玉哲郎(b)

2014年6月4日 大阪・ミスター・ケリーズでLive録音

■収録曲(試聴できます)
01 Just One of Those Things
02 Embraceable You
03 Johnny Guitar
04 The Good Life
05 Georgia on My Mind
06 'S Wonderful
07 What A Difference A Day Made
08 Flamingo
09 Between the Devil and the Deep Blue Sea
10 Mood Indigo
11 Papa Loves Mambo
12 夢であいましょう
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Liner Notes

 中谷泰子の約4年振り、8枚目の正規アルバムは、初のライヴ・アルバムで、それも世界一の呼び声もある現在のジャズ界のトップ・ドラマーの一人、ルイス・ナッシュとの共演盤だ。二人の出会いは、2013年にルイス・ナッシュが大阪のジャズ・クラブ「ミスター・ケリーズ」で毎日共演メンバーを変えて行った3日間の連続ライブのヴォーカルの日に彼女が抜擢されてルイス・ナッシュ(ds)、多田恵美子(p)荒玉哲郎(b)のトリオで歌った時だった。この時の彼女のステージが大変評判が良く、今年(2014年)6月に「ミスター・ケリーズ」で再び彼の連続ライヴが行われた時、彼女も呼ばれた、丁度、彼女の前作「ザ・ニアネス・オブ・ユー」をプロデュースしたdoLuck Jazz レーベルの平井清貴氏が彼女の新作を考えていたので、話は、とんとん拍子で進み本アルバムの録音が実現した。前回の時、ルイスが歌も歌うことを聞き知っていた彼女は、彼にデュエットを申し込み、和気あいあいの中「ホワイト・クリスマス」を二人で歌っておおいに受けて、世界的なドラマーとの距離が一挙に縮まった気がしたという。彼女は、「シンガポール・スリリング」というアカペラ・グループで活躍していたこともあるので、コーラスは、お得意だ。今回もルイスと「Georgia On My Mind」を歌っている。最後の「Papa Loves Mambo」でもルイスは、バック・ヴォーカルを担当している。スクールで教えている彼女は、この様に、聴衆を巻き込んで盛り上げることもとても上手い。

 中谷泰子は、大阪生まれの大阪育ち。武庫川女子大学音楽学部声楽科を卒業、クラシックの勉強をみっちりやってきたので声楽の基礎は、しっかりしたものを持っている。卒業後は、ピアノの弾き語りでジャズ・ポップスをホテルのラウンジやライヴ・ハウスで歌い、同時にミュージック・スクールの講師として教鞭もとっていた。前記のようにアカペラ・グループでソプラノを担当していたが、彼女の澄んだ美しい高音は、大変魅力的だった。月や、星空に似合う声を探していた和歌山のみさと天文台長の尾久土正己氏に気にいられ、天文台関係のイヴェント等でも歌い、2000年10月に彼のプロデュースで彼の立ち上げたLyraレーベルに初アルバム『今夜教えて』を録音する。満ち欠けする月食の写真をカヴァーに使ったこのアルバムは、心やすまるヒーリング・ミュージックとして注目され、この頃から、東京にも進出して毎月ライヴを行うようになり、同レーベルから趣向を変えたアルバムも次々発表、2010年に活躍の場を東京に移す。その後、渡米して、ニューヨーク及びコロラドで生活する。ニューヨークでは、弾き語りのダリル・シャーマンやキャロル・フレディットから歌とピアノの指導を受ける。帰国後は、東京を中心に活躍、大阪へは、定期的に帰郷して歌っている。彼女は、ジャンルにとらわれず何でも歌える懐が深く幅の広いシンガーだ。彼女は、バヌ・ギブソンのザ・ニューオリンズ・リバイバル・ジャズバンドのライヴにゲスト出演して歌ったし、ダリル・シャーマンのエリントン生誕115年記念コンサートでもゲストで歌っている。

 ルイス・ナッシュは、富士通コンコード・ジャズ・フェスティバルの1994年のルイ・べルソン、ジェフ・ハミルトン、グラディ・テイトとのドラム・バトルや2006年、2008年のルイス・ナッシュ・ビバップ・オール・スターズ、2013年のジェフ・ハミルトンとのドラム・バトルなどで日本では顔なじみだ。初来日は、1986年でロン・カーターのカルテットの一員としてだった。この年は、2度来日したが2度目の時は阿川泰子と共演もしている。彼は、1982年に、べティ・カーターのグループに参加、約3年間ベニー・グリーン(p)等と共にべティ・カーターの伴奏をして彼女から多くの事を学んだという。彼女は、常に、焦点を合わせた集中力、創造性と想像力を要求したという。べティ・カーターの1982年のアルバム『Whatever Happened To Love?』や1988年の『Look What I Got』で彼の初期のドラミングを聴く事が出来る。その後、ロン・カーターのグループ、ピアノの詩人と言われたトミー・フラナガン・トリオで活躍する。彼からは、ドラムを詩的に演奏することを教わったという。その他にもソニー・ロリンズ、ディジー・ガレスピー、ジョー・ラヴァーノ、秋吉敏子等多くのバンドで演奏してニューヨークで最も忙しいドラマーといわれる。参加レコーディングの数も多く300とも400とも言われる。歌の方でも、べティ・カーターの他、ダイアナ・クラルの2作目『Only Trust Your Heart』そして『When I Look In Your Eyes』の録音をはじめ多くのヴォーカル・レコードの録音に参加している。大変に適応性のあるアーティストでジャンルを超えた分野で活躍、メリッサ・マンチェスターやジョージ・マイケル等とも共演している。しかし、日本人ヴォーカリストとのレコーディングは、今回が初めてかもしれない。

「Just One Of Those Things」は、コール・ポーターが1935年のミュージカル『ジュビリー』の爲に書いたナンバー。いきなりルイスのドラム・ソロから始まる。中谷の提示したテンポは、可なり早いが、世界一のドラマーの確実なドラミングに支えられ、ハイスピードで安定した素晴らしい歌を聞かせる。ドラム・ソロ、ピアノ・ソロも聞き物だ。「Embraceable You」は、ガーシュイン兄弟が1930年のミュージカル『ガール・クレイジー』の爲に書いたナンバー。 中谷は、ロマンチックなムードでしっとりとしたバラードを聞かせる。「Johnny Guitar」は、1954年の映画『大砂塵』の爲にペギー・リーが書き、ヴィクター・ヤングが作曲して、ペギー・リー自身が歌った。ソプラノからアルトへ低くなった中谷の声に合った哀愁を含んだ歌は、ないかと探していて出会った曲だという。日本では有名だが、アメリカでは案外知られていない曲。中谷は、哀調を帯びたしっとりとしたムードで聴かせる。「The Good Life」は、フランスのシンガー、ギタリストのサッシャ・ディスティルが書いた曲に1963年にジャック・リアドンが英詞を付け、トニー・ベネットの歌で有名になった。サッシャの恋人だったブリジット・バルドーが人気が出て華やかな生活するように成って行くのを見て、そんな良い人生には、さよならして、戻って来てほしい、という気持ちを込めた歌だという説もある。中谷は、ニューヨークに住んでいた時、TVの番組NBC Todayでロックフェラー・プラザ前の野外ステージでトニー・ベネットとビリー・ジョエルがデュエットするこの歌を聞いてすっかり気に入って彼女のレパートリーに入れたという。ここでは第二コーラスからテンポを変えて快唱する。「Georgia On My Mind」は、1930年のホーギー・カーマイケル作曲、スチュアート・ゴレル作詞の作品。何と言っても1960年のレイ・チャールズの録音が有名だ。ここでは、グルーヴィーな多田のピアノ・ソロも挟み、珍しくドラムを叩きながら歌うルイス・ナッシュと中谷の掛け合いのコーラスで聞かせ会場をわかせる。「S’ Wonderful」は、ガーシュイン兄弟の1927年のミュージカル『ファニー・フェイス』の中のナンバー。 中谷は、ルイスのドラムスとのデュオでワン・コーラス、そして多田のピアノが入って来る、気合いの入った歌と演奏だ。来日していた中谷の師匠で友人のピアニスト・シンガー、ダリル・シャーマンから「ルイスとやるならこの曲が映えるわよ」と勧められたナンバーだという。そして「What A Difference A Day Made」に入る。この歌は、マリア・グレヴェールが書いたスペイン語の歌に1934年にスタンレー・アダムスが英詞を付けたもので、1959年のダイナ・ワシントンのレコードで一躍有名になった。貴方との恋が実って、たった一日で世の中がすっかり変わった、というナンバー。中谷は、一転して荒玉のべース・ソロを挟んでしっとりとしたムードで歌っている。「Flamingo」は、エド・アンダーソン作詞、テッド・グルーヤ作曲、1941年の作品で、ミスター・フラミンゴといわれたハーブ・ジェフリーズが歌ったデューク・エリントン楽団の録音が有名だ。若くして癌で亡くなった同郷のシンガー、越智順子が良く歌っていた。中谷自身も当時、初期の癌で入院中だった。幸い彼女は、快癒したが、亡くなった彼女の分まで歌って行かなければ、と心に誓って歌い始めたナンバーだという。大空を行くフラミンゴに恋人への愛を託す歌、ピアノのソロを挟んで、中谷は、気持ちの入った歌を聞かせる。ルイスの詩的なドラミングも注目だ。「Between The Devil And The Deep Blue Sea」は、ハロルド・アーレン作曲、テッド・コーラー作詞による1931年の作品。中谷が昔から良く歌ってきたナンバー。ベースとドラムスによる掛け合いも入ってテンポ良くスインギーに歌い最後は、ハーフ・テンポにしてベイシー風に終わる。「Mood Indigo」は、1931年のエリントンとバーニー・ビガード作曲、アーヴィング・ミルズが作詞とあるが、ミッチェル・パリッシュ作詞とも言われる。ダリル・シャーマンに「あなたに合うから」と勧められたナンバー。恋人に捨てられた夕暮れ時、深く沈む気持ちをブルーなムードの横溢した歌で聴かせる。多田のピアノも効果的だ。「Papa Loves Mambo」は、アル・ホフマン、ディック・マニング、ビックス・レイクナー共作、1954年のペリー・コモの歌でヒットしたポップ・ナンバー。 中谷は、ライブの終わりで聴衆も参加出来る歌を良く歌うが、ここでは、ルイスと一緒に歌い、最後は、聴衆と合唱して盛り上がってステージが終わる。アンコールの「夢であいましょう」は、彼女がライヴのエンディング・テーマにしている60年代のNHKのバラエティ番組の主題歌、中村八大作曲、永六輔作詞、坂本スミ子が歌った。中谷は、自作の英詞も付けて歌っている。

 世界一といわれるドラマ―を迎えて、一発録りというライヴ録音は、通常とは一味違う緊張感のあるもので、彼女の音楽生活の中でもエポック・メーキングなものだろう。これをステッピング・ストーンにして更なる飛躍が期待される中谷泰子だ。今年(2014年)12月には3度目のルイス・ナッシュとの共演が予定されている。
高田敬三(ジャズ評論家)
Producer's Note

doLuck Jazzレーベル3枚目のアルバムをお届けします。今回はライヴ録音。しかも大物ゲストを招い ての作品と、3作目にして早くもエポック・メイキングな作品となっております。さてルイス・ナッシュ といえばいまさら説明の必要もない世界のファースト・コール・ドラマーのひとりだが、録音の現場で 聴いた時に思ったのは「なんてやわらかいのだろう」ということ。と言っても叩き出されるサウンドの ことではない。ブラシはシャープだし、シンバルも鋭く切れ込んでくる。そして彼はどんどん前のめり にリズムを刻む…と書くと、他のメンバーをやたらと煽っているようだが、そうではない。ぐいぐいと 突き進むビートが、中谷のヴォーカルや、多田のピアノ、荒玉のベースを大きくつつみこんで「歌」に 仕上げていく。そこのところの包容力の大きさ、自在さが、彼のドラミングをやわらかく感じさせてく れたのだろう。そうなると、彼のドラムの上でいかに自在に動きまわって「歌」を紡いでいくか、中谷 泰子の力量が問われるところだ。
 さて、その結果は? ミスター・ケリーズを満席にしたお客様たちがメンバーたちとともに楽しみ、 堪能したステージを聴いて、ひとつ判断してみてください。
doLuck Jazz 平井清貴