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doLuck jazz DLC-20
2,400円(税別)
2月6日発売


 
Dreamer / Saori Nishikawa Group

西川彩織(ds)
小田采奈(as)
松原慶史(g)
千葉岳洋(p)
佐藤潤一(b)
小柳えめり(per)

2018年9月12,13日 前橋市・夢スタジオで録音



■収録曲(試聴できます)
01 Impulse
02 Mid-Air
03 Grassland
04 Satin Doll
05 Strategist
06 Nica's Dream
07 If I Were A Bell
08 Moon Boat
09 Dreamer

Liner Notes

若きドラマー西川彩織の意欲的な新作デビュー

 女性ドラマー西川彩織が自身のコンボによるリーダー作アルバムを発表した。1989年生まれの若さに拘わらず既に多くのビッグバンドやグループに参加して、強力なドラミングを嘱望されている彼女は、2016年に自己のグループを編成して、定期的なライブを開催してきた。その間ドラムの演奏を前進させるだけでなく、そのためのオリジナル曲の制作やグループのアレンジにも力を入れてレパートリーの充実に努力を重ねてきた。今回のアルバム『Dreamer』は全9曲、内オリジナルが6曲を占めるので、その作風とアレンジの双方に彼女の意欲的な音楽的才能を鑑賞することが出来る。

〈西川彩織の音楽歴〉
 1989年和歌山県田辺市の生まれ。高校卒業後上京して慶應義塾大学文学部に入学し、ビッグバンド・ジャズ・サークルの「K.M.P. New Soundオーケストラ」を見学してドラムに惹かれて入部し、精進の末2年生の時にレギュラーバンドのオーディションに合格し、2011年と12年山野楽器主催の大学ビッグバンドジャズコンテストに出場、学外の奏者やプロミュージシャンとの交流の機会が増大し、ドラミングを粕谷謙介氏に師事。卒業後は一度企業に就職するが夜間はライブハウスのセッションを続け、2年後の20115年プロの道を選んで東京を拠点に演奏活動をスタートさせる。多くのクラブやライブハウスに出演する中、人気者のクミコ・カーロ(p,vo)の目にとまり銀座「Barbra」に出演するようになる。山本剛を始め高木里代子、坂本千恵、デヴィッド・マシューズ(p)や、エリック・マリエンサル(sax)、川嶋哲郎(ts)、多田誠司(as)、中村健吾(b)らと共演している。ジャズにクラシックの要素を取り入れた女性4人組の「Fabrhyme」のメンバーとして2018年2月アルバム「Hello」をリリースした。
 尊敬するドラマーとしては、エルヴィン・ジョーンズ、ケニー・ワシントン、カール・アレン、メル・ルイス、ソニー・ペインなどの名を上げる。
 自身のドラミングのモットーは、ビッグバンドの経験からドラムのサウンドがバンドとうまく調和してスウィングすることで、今回のアルバムでも、トリオからセクステットまで、ソロとアンサンブル双方に豊かな表現力を発揮している。

〈西川彩織グループの編成とメンバーについて〉
 西川コンボの結成当初は、ピアノ、ベース、おあーかッション、サックスを含むクインテットで発足したが、ギターの松原慶史と出会いメンバーに誘って現在のセクステットになった。何れも若手ながら一流の実力者を揃えた強力ユニットで、全員が卓越したソリストであると共に、西川のアレンジによるサックスとギターのユニゾン・アンサンブルが、他のグループでは聴けない独自の刺激的なサウンドを形成して、大きな魅力を形成している。本アルバムは全9曲、録音は2018年9月12-13日、前橋の夢スタジオにて。

千葉岳洋(piano)
 1991年宮城県仙台市生まれ。8歳からピアノやエレクトーンを学び、東京大学文学部に進学。ジャズ研やビッグバンドで演奏すると同時に、運動会相撲部に所属し主将をつとめる。卒業後、プロ演奏活動を開始し、2015年ニコニコ動画初のビッグバンド「Lowland Jazz」でメジャーデビュー。浅草ジャズ、ちぐさ賞コンテストで優勝し、作編曲家としても活動中。2018年4月にはChigusa Recordsからリーダーアルバム”Alpha And Omega"をリリースした。

佐藤潤一(bass)
 高校生よりジャズを始め、 国立音楽大学ジャズ専修出身。 ベースを井上陽介、金子健両氏に師事。 2017まで「NewTide JazzOrch.」に所属し、東京JAZZに出演。 神保彰、山下洋輔、小曽根真、高橋徹と共演。 アコースティック、エレキ両ベースをこなして活動中。

小柳えめり(Percussion)
 洗足学園音楽大学打楽器コース卒。 卒業後は小中高生を対象の芸術鑑賞教室の演奏や、歌手、奏者のサポートに活躍、ブラジルに2度渡って本場の音楽を体験ピアノとパーカッションのユニット「EMG」、サンバチーム、打楽器合奏グループなど多岐に活動。

小田采奈(sax)
 国立音楽大学管弦打楽器専修(クラシック) 演奏応用(ジャズ)コース修了。 ジャズを池田篤に師事。山野ビッグバンドジャズコンテストで「Newtide Jazz Orchestra」で2回最優秀賞。渡辺貞夫、本田雅人、小曽根真と共演。 「BigBand for anime songs」でメジャーデビュー。 クラシックを含めジャンルに囚われず活動中。

松原慶史(guiter)
 1985年静岡県三島市生れ。2004〜2005年ノースアラバマ州立大、ノーステキサス州立大に留学してギターを学ぶ。2006年ノーステキサス州立大でジャズ・ギター専攻。米国各地で演奏。2001年帰国、多くのグループに参加しながら、自己のクインテットでオリジナル曲、Standard Trioでスタンダード曲を中心に演奏、2016年Gibsonのコンテストで優勝。ちぐさ賞で和田明(vo)とのデュオで有償、全曲ソロギターでの映像作品をUSB動画アルバムでリリース。2018年10月エレックレコードより初アルバム『Angel's Share』をリリース。

〈演奏曲目について
 各曲について西川彩織自身の解説を先ず紹介し、それに私のコメントを附加したい。
1.Impulse
『ブルース進行を元にしたシンプルな構成のアップテンポ・ナンバー。疾走感あふれるソロにアルバム一曲目に相応しい衝動・ワクワク感が詰まっています。パーカッションが入ることでまた独特のグルーヴが生まれました。』
 西川の言う通りの疾走感は、恰もスポーツカーがエンジンを始動する「イントロ」から快速で走り出す「テーマ」の展開を感じさせる。ドラムの引っぱるサック氏とギターのユニゾンの流れが、西川バンドの独自サウンドを印象づける。
2.Mid-Air
『上空から眺めた都会の夜景をイメージして書きました。メロディアスな旋律、サックスとギターのユニゾンやハーモニーがコンテンポラリーなサウンドに導きます。是非ワインやカクテルを片手に聴いていただきたい一曲です。』
 西川バンドの卓越したバラッド演奏能力を示す。
3.Grassland
『サンバのリズムに爽やかなギターの音色を乗せ、ブラジルの草原に風がそよぐ様を表現しています。パンデイロに始まり段々とパーカッションが増えてゆき最後は賑やかなムードに。ブラジルの暖かな風を感じていただけますように。』  サンバの演奏に不可欠の松原慶史のギター・プレイの妙を満喫できる。
4.Satin Doll
『コケティッシュなサテンドールのイメージを拍子を変えたアレンジで表現してみました。酒場でなんとかして女性の気を引こうとする男性の様子が目に浮かびます。このアルバムで唯一のピアノトリオをお楽しみください。』
 千葉(p)と佐藤(b)とのピアノ・トリオで何れも若手の一流実力者だけに密度の濃い演奏を聴かせる。
5.Strategist
『投資などの戦略を立てるエキスパートのことをストラテジストと呼ぶそうです。ちょっと奇妙なコード進行と7拍子の16ビートがスリリングで面白い仕上がりになりました。ドラム&パーカッションのバトルソロにもご注目ください。』
 投資のエキスパートが多彩な案件の間から最適条件を選び出す複雑な過程を示すようなリズムとメロディの奇妙な交錯が面白い。各メンバーの高度な実力と才能がみなぎる。
6.Nica's Dream
『ホレス・シルバーが当時ジャズ界のパトロン・ニカ夫人に捧げた有名な一曲。通常はラテン&スウィングで演奏されますが、今回はメロディの美しさを際立たせるためサックスをフィーチャーしたバラードに仕上げました。』
 ハード・バップの有名曲を小田采奈のアルト・サックスを全面フィーチュアして、彼女のクラシックもマスターした演奏力を情緒たっぷりに表現させている。
7.If I Were A Bell
『「もし私が鐘なら…もし私が旗なら…」湧き上がる恋の感情をひたすら色んなモノに例えている可愛らしい歌詞の付いた一曲。アレンジを加えつつもワンホーンのシンプルな編成でオーソドックスに演奏しました。』
 ピアノ・トリオとサックスの4人だけの軽快な演奏で、ドラムのリードが際立って全体をスウィングさせる。
8.Moon Boat
『万葉集に柿本人麻呂が詠った「天の海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ」という叙景歌があります。なんとも美しい言葉の並びにインスピレーションを受けました。次々と登場人物が現れるかのようなテーマもポイントです。』
 日本の美しい古歌をテーマにした雅やかなメロディが素晴らしく、ピアノを始め各自のプレイの表現力が一幅の絵を画き出す。
9.Dreamer
『この曲の大半は暗くどんよりとした雰囲気。最後にようやく光が差し込んで未来が見えてきます。ギターの揺れ動くメロディ、ピアノとベースの絡み合いも聴きどころ。自然と音楽に身を任せることができ、ワンテイクで録り終えました。』
 ラストに相応しく各メンバーのプレイが余韻を残して輝かしい未来を予知させるようなムードでコーダを迎える。(終)
(2018.12.26. 記:瀬川昌久)