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doLuck jazz DLC-2 2,400円(税別) 4月30日発売 > |
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Liner Notes 吉野ミユキ女性カルテットの意欲的新作『STARTING POINT』 女性アルトサックス奏者として、実力とキャリア共に最高に位する吉野ミユキの新リーダーアルバムが誕生した。前作”Straightaway”(2009年)が各方面で絶賛され、リーダーとしてのライブ活動が活発化する中、今回は長年活動を共にする女性リズムセクションとの女性カルテットによるレコーディングとなった。 収録は彼女のオリジナルとスタンダードが5曲ずつで作曲、編曲の才に秀でる彼女の多彩な創作能力と、既に名演の多い馴染み5曲に対する彼女の挑戦意欲の双方を十分に堪能出来る内容になっている。 共演する外山安樹子(p)、若林美佐(b)、鈴木麻緒(ds)の3人は、何れも高水準の技術と豊富な演奏体験を有する実力者で、ミユキの意を体した多彩なリズムパターンを軽快にスウィングさせるばかりではなく、各人がそれぞれ個性的なソロ・プレイを生み出して、サウンドの幅を広げている。特にピアノの外山安樹子は、既に自身のトリオによるアルバムを数枚発売しており、 本作においても吉野の曲調に合わせた密度の高いプレイが各曲に聴かれる。 最近の日本ジャズ界において、アルトサックス奏者は男女を問わず多数活躍しているが、吉野ミユキのように同じメンバーのグループを長く維持してライブを続けるのは容易ではない。従って多くのレコーディングが、リーダーのプレイを中心にしたセッションになりがちだが、ミユキは自らの綿密な曲構成とアレンジを平素からメンバーに周知させているので、完璧に揃った隙のないアンサンブルと、各メンバーの当意即妙の自発的なインプロヴィゼイションとが見事に合体したジャズの醍醐味を感じさせてくれる。 【吉野ミユキの音楽歴について】 埼玉県の出身で、10才からアルトサックスを始め、11才から秋本康夫氏に師事して基礎的奏法をみっちり学んだ。日大芸術学部在学中にジャッキー・マクリーンの音楽に出会ってジャズに目覚め、大森明氏に師事してジャズの演奏と理論を学ぶ。 2000年始め頃、まだ女性サックス奏者が現在ほど輩出しない頃に盛んにライブに出演して、マイルスやコルトレーン始め重要なジャズの曲を2管で演奏する彼女の積極的姿勢を見て私は感じ入った覚えがある。その後2004年、アルバムが発売された本格的女性ビッグバンド”Blue Aeronauts Orchestra”に参加してアレンジとアルトのソリストとして頭角を現し、同時にソロ活動を活発化して評価を高める。2009年の初アルバムは各ジャズ誌で広く賞賛され、以来ライブ活動に加え、ジャズスクールの講義やアルトサックス奏法の著書出版など多岐に亘る活動を続けている。 アルトサックス奏者は、恐らく現在の管楽器奏者中最も数多い部門であるが、彼女のアルトは技法に習熟している上、音色に独自の暖かさとふくらみがあり、音量も男性に負けないパワーを保持しつつ、滑らかなフレージングに女性らしい繊細な味が漂って、聴く者に情熱と安らぎを与える。昔から作曲の才を発揮しているが、今回のレコーディングは、特にいろいろな状 況を歌い込んだ思い入れの深いオリジナル5曲を収録し、著名なジャズのスタンダード5曲と対比して聴くことによって、一層の興味を覚えるように配慮されている。 瀬川昌久(ジャズ評論家)
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