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doLuck jazz DLC-15 2,400円(税別) 4月19日発売予定 |
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Producer's Note 歌い継がれてきた旋律を新たに紡ぎ出す。佐藤恭子の古今スタンダード新解釈! 自身が率いる10ピース・バンド「リトル・オーケストラ」ではコンポーザーとして積極的にオリジナル作品を発表している佐藤恭子が、パーカー、モンク、デスモンド、ジャコの作品から、スティービー・ワンダーやジョン・レノンの曲まで、すべてカバー曲で構成。原曲のメロディを大事にしつつ、ジルデコのkubota、俊英・井上銘の2本のギター、そして成田祐一(p)、西嶋 徹(b)、大村 亘(ds)のトリオとともに、セクステット、クインテット、トリオそしてデュオと、変幻自在に形を変え、リズムとハーモニーを絡ませていく。現代に提示するスタンダード集として、“愛する歌たち”で綴ったソング・ブック。 Liner Notes タイトルの由来。今回カバーアルバム制作にあたって感じたのが、収録する曲やその歌詞、それらが作られた時代背景を鑑み、作詞作曲者、演奏者の人生や各々の気持ちを想像するなかで、音楽が生まれる根底にある大きなエネルギーは、愛情―恋愛はもとより、日常を愛でること、家族や友人を想う愛、人生への愛、音楽そのものへの愛、など―、と、いろんな愛の形を感じたこと。そしてまた、私の愛する歌たち、という、二重の意味を込めて、
”Love Songs”
としました。ちなみに、副題の、”Melodies Of Yesteryears, Melodies Of Modern Days”は、ドラムスとタブラで参加くださった大村亘くんのアイディア。既存の曲に新鮮な息吹を吹き込む中で、音楽の三要素である、メロディ、リズム、ハーモニーのうち、今回メロディだけはどの曲も原曲に忠実に、変化を与えなかったこと。 また、過去の時代のメロディも現代のメロディも、人間の喜怒哀楽の感情が昇華したものであって、どんな時代に生きようとも、人間のもつ基本的な資質は変わらないし、どんな時代に生きようとも、人はうたをうたわずにはいられないのだ、という意味合いを込めて、副題に添えました。 □1. Softly as in a Morning Sunrise 邦題の「朝日のように爽やかに」で誤解されがちなのだけど、はじまりは朝日のように柔らかく穏やかで心躍れども、そんな恋の物語の最後はきまって沈む夕日のように全てを奪い去っていくものだ、と唄う、実はせつない曲。メロディをそのまま残しつつ、コード進行を、最近のjpopや映画音楽などによく見られるものやスパニッシュ音楽に見られる響きも用い、原曲のもつエネルギーを残しつつ過去に今を表現してみました。 録音初日の最後に演奏、実はこのひとつ前に録音したテイクに決まりかけてたところ、私がどうしても納得いかなくて、もう1テイクの録音を懇願。真夜中近く、皆、気力体力の限界でもう手足が動かないと意見が割れるも、結局もう1テイク録らせていただいたのが採用になりました。深謝。 成田くんのソロが素晴らしく、エンディングの銘くんと久保田さんのギターバトルは、二人曰く、気持ちよすぎて何時間でもやってられるねー、と、私もずっと聴いてたい心地よさ。それを支える西嶋さんの強く暖かくしなやかなベースと、支えながらも爆発する亘くんの圧巻のドラミング。一曲目にもってきました。 2. Send One Your Love この曲やってみない?と提案&編曲は、久保田さん。”心からの愛を君に贈るよ、数え切れないほどのバラの花束とともに”という言葉からはじまる、人生の喜びで満たされるようなスティービー・ワンダーの名曲は、実はすごく音楽的に緻密に計算され尽くしており、独特のハーモニーやメロティには古き良き時代のジャズの影響も大きくみられます。原曲の素晴らしさを失わずに暖かくてピュアな三拍子のジャズワルツテイストに仕上げてくださった久保田さんのセンスと才能に脱帽です。 3. Stardust ”輝く星屑を見上げながら今も未だ君を想うよ”、と、数々の名演の中でも、ナット・キング・コールの唄うこの曲が大好きで、バラードを収録するなら迷わずこれ、と思いました。シンプルに演奏しました。銘くんの、力強くも優しくて暖かいギターソロがほんとうに心地いい。 4. Love Theme from Spartacus ツインギターのサウンドのイメージの参考に、と、久保田さんに紹介いただいた、ケニー・ウィーラーの作品がきっかけで大好きになった曲。そのアルバムでは、映画と同じく三拍子のバラードでダークに演奏されているのだけど、収録にあたって、久保田さんの編曲、新たな息吹をもたらしてくださいました。 映画におけるこの曲の位置づけは、儚く悲しい永遠の愛。今後も色あせないであろう名作は、何度見ても涙がとまらず、何度見ても涙が枯れます。成田くんのピアノの音色が本当に美しく悲しくて、映画のワンシーンを思い出さずにはいられないのです。 5. Take Five アルトサックスでジャズを演奏してると、一番リクエストされる曲ではないでしょうか。原曲のメロディや匂いを残しつつ、有名なイントロを削ぎ落とし、ハーモニーを変化させてみました。 この曲のメロディを吹くと、なぜか、子供の頃に馴染み深かったわらべうたを連想してしまうのだけど、そんな懐かしい過去や、幼い頃の遠い記憶を思い起こすような、そんな風に聞こえたらいいなと思います。銘くんが、素敵なエンディングを添えてくれました。多謝! 6. On the Sunny Side of the Street 1930年に作られた、陽のあたる道に飛び出せば人生はきっと素晴らしいものになる、と、この後に世界が迎えた暗く悲しい出来事を全く想像させない、ポジティブさに包まれた曲。 ほんわかと暖かく繊細な久保田さんのギターとあうなぁ、というところで、デュオでの演奏でおつきあいいただきました。 大好きな作曲家Pyotr Ilyich Tchaikovskyの、作曲家としての成功とは裏腹に悲しみに包まれた人生に哀悼の意を表した曲です。 7. Evidence セロニアス・モンクによる、シンプルでトリッキーなメロディをもつこの曲は、ミディアムかアップテンポのスウィングで演奏されることが多いのですが、あえてバラードでの演奏というのは、亘くんのアイディア。 さらに、銘くんの提案で、サックス、ギター、ピアノはバラードで演奏しつつ、ドラムとベースはそれぞれフリーでソロでという、複数の時間軸を取り入れての録音。西嶋さんと亘くんの繊細ながらも豪快なアプローチが素晴らしいです。演奏する度に、皆、笑いと充実感に満たされてるように感じます(笑)。 8. Liberty City エレクトリックベースの奏法に革新をもたらした天才ジャコ・パストリアスの代表曲。ジャズをはじめた当時、40年代、50年代のビバップやハードバップを演奏していたけど、よく聴いたのはバップでもサックス奏者でもなければ、1970年代のパット・メセニーやジャコが好きだった、と話したことがきっかけで、この曲を取り上げることになりました。 原曲の個性が強すぎて編曲の余地があるのか?、無事に録音できるのか?と、不安でしたが、終わってみたら意外と大丈夫かな笑。混沌としつつ、自由で、エネルギーに満ち溢れたこの時代のエッセンスは残せたような。7拍子になったり8拍子になったりします。 9. Summertime ガーシュウィンが死の直前に書いた、1920年初頭のアメリカ南部の黒人たちの貧しい暮らしを描く初のアメリカンフォークオペラ、”ポーギーとベス”の劇中でうたわれる、子守唄。鎮魂歌とも言えそう。 強く生きよ、大空に羽ばたけ、というメッセージと、劇のストーリーを示唆するダブルミーニングが素敵で、私の想う子守唄に編曲しました。ギター二本とサックスのトリオ。イメージを伝えて、ディレクションは銘くんの想像力にお任せ。聴きながらこのまま寝れる(笑)。 10. Great Indoors かねてから、何故か電車や汽車をイメージした曲に心が惹かれるのですが、ジョシュア・レッドマンが、シンガーソングライターのジョン・メイヤーの、「Stop this Train」という曲をカバーしたのが素敵で、それがきっかけでジョンが好きになって、という話をしていたら、亘くんが、彼の「Great Indoors」を提案してくれて、久保田さんが原曲から一歩踏み込んだ編曲を、西嶋さんが更に細かくディレクション下さって、すごく素敵に仕上がりました。 ぬくぬくと引きこもってるのは居心地いいけど、勇気をだして外の世界に飛び出そうよ、という曲にぴったりな銘くんのギターソロと、それを煽るリズムセクションの4人がめちゃくちゃカッコイイ。 11. Confirmation 人前ではじめて演奏した曲。サックスをはじめて2週間で本番でした。チャーリー・パーカーのオリジナル録音をはじめてきいたときに、これは曲なの?と、今までに全く聴いたことのないユニークさ、更に、それを即興で演奏しているという事実に、え?え?え?と。当時のサークルの先輩に何度も”ほんとにアドリブ?譜面ないの?”と聞き返し、並々ならぬ衝撃を受けたのは、今でも、昨日のことの様に思います。 今回、収録曲すべての音楽的根幹を支えてくださった西嶋さんにデュオでのお付き合いお願いしました。2日目最後に録音、疲労で唇も集中力も切れかかったところ、変わらずしっかり支えてくださって痺れました。音楽の道は、追っても追っても届かない虹だったり、歩いても歩いても終わりのない旅のように、まだ出会えぬ憧れを追いかけているようでいて、実はいつもそばにいてくれて祝福してくれているんだなって思います。 12. Imagine 亘くんにタブラで参加してもらうなら、彼の奏でるタブラの深い響きや優しさ、おおらかさが伝わるものを収録したい、と考えた時に、タブラの響きに包まれた時に心に感じる時間や空間と、この曲が伝えたい世界、無の境地、愛の深さや大きさは、お互いに引き合うんじゃないかと思いました。録音後に知りましたが、ジョンはこの曲を発表する3年前に、ビートルズのメンバーとメンバーそれぞれの家族や恋人たちと皆で瞑想の修行のためにインドに滞在していたのですね。 成田くんには当初アコーディオンで参加していただこうかと思っていたのですが、ピアノのキラキラした繊細な拡がりを素敵に添えてくださって、結果的に大正解でした。 収録にあたって、実は、Let it beとどちらを取り上げるか迷ったのだけど。Let it beは次かな?(笑)。 2017年2月5日 佐藤恭子
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