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doLuck jazz DLC-12 2,400円(税別) 11月9日発売 |
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Liner Notes 幼少期の私にとって母の歌といえば、母が地元のお祭りで毎年必ず歌っていた「Release Me」です。偶然にも夏祭りにはいつも大学時代のカントリー仲間のバンドが呼ばれて演奏しており、舞台から、お約束どおりの流れで声をかけられて歌っていたようです。おかげで、カントリーには割と親しみ、興味がわいたものでした。 小学生ながら、「Country Road」はもちろん、母が持っていたレコードで、「I Saw the Light」なんかもよく聴いた覚えがあります。父や叔父のギターで母が歌った「永遠の絆(Will the Circle be Unbroken)」なんかも、カッコいいな~と思ったりしたものです。「君微笑めば(When You're Smiling)」がジャズのスタンダードであるということを知ったのはもっと後でした。そして母が歌う曲の中で最も聴き続けたのが、まさに世界でも何番目かに有名な、今回のCDにも収められている「Tennessee Waltz」です。身内として恥ずかしながら言ってしまえば、今回の録音は母がこれまで歌ってきた「Tennessee Waltz」の中でも過去最高の出来と言えます。 それまでカントリー一辺倒だった母が、齢五十を過ぎて突如ジャズボーカルを目指し、レッスンに、ライブに、それはもう貪欲に取り組んで屈折20数年…。このCDはその時間が無駄ではなかったことを証明しているのではないでしょうか。言わずもがなですが、今回お相手してくれた秋田慎治さんの存在、演奏力、表現力によるところがとてつもなく大きく、秋田慎治さんにはどれだけ感謝してもしきれません。 母、ことエラ斉藤の歌と言えば、特別テクニックがあるわけでもなく、とりわけジャズにおいては最も重要な「リズム」にはいつも苦労していました。英語の発音に関しても、きちんとわかる人の評価を聞いたわけではないけれど、まぁ合格点ではないことは確かでしょう。 では、エラ斉藤の歌のどこが素晴らしいのか― 誰もが知っている名曲を歌いながら、心から湧き出る“歌うことの喜び”を素直に表現している、その一点に尽きるのではないでしょうか。実は、この点こそが一番難しいことだと思うのです。アマチュアのジャズボーカルというと、発音や音楽的な理論・テクニックを重視するあまり、歌を楽しむというよりは、力みすぎたり、こねくりまわしたり、まるで一生懸命技術をひけらかしているだけのように聴こえてしまうことが往々にあるような気がします。 今回のCDは、スタンダードの中のスタンダード、王道の名曲、珠玉の名曲の数々を、“秋田慎治”という名手のまさしく“魔法”にかけられ、純粋に楽しんでいる、そんな母、エラ斉藤の“歌うたい”という人生の集大成になっているのは間違いないです。 母親の子守歌を聴く子供のような純粋な気持ち(笑)で、どうぞ最後まで聴いてみてください。(札幌・ジャムジカ 齋藤次郎) |