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doLuck jazz DLC-11
2,400円(税別)
9月28日発売予定


 
Horizon / Hiroyuki Miyashita Trio

宮下博行(p)
小美濃悠太(b)
田村陽介(ds)
升本しのぶ(vo)

2016年7月4,5日 前橋:夢スタジオ・スタジオ8で録音

■収録曲(試聴できます)
01 Horizon Suite
02 Tan Tan
03 So That You May Relax
04 Brown Sketch
05 Days of Wine and Roses
06 The Way of Suggestion
07 Like You, Like Me
08 Two This Plan
09 Mystic Encounter
10 Love Will Stay

Liner Notes

Horizon ● Hiroyuki Miyashita Trio 小山智和(MOONKS)
 レコードを手にする」、「レコードを買う」、といった場合、何を基準にするのだろうと考えることがしばしばある。アーティストやレーベル、楽器、編成等々、ジャズファン一人一人がなにかしらのこだわりを持っていて、こだわりを持ってこそジャズファンなのだと思う。自分の場合目下のところ「ピアノトリオ」編成の作品を好んで聴いているがいざレコード店の棚からレコードやCDを手にするのは直感や偶然な所が大きく、無名なアーティストでも知っている曲が一切並んでいなくてもお構いなし。目に見えない何かしらの縁で購入まで至っていると思っている。
 吉祥寺に「Meg」というジャズ喫茶がある。ジャズとオーディオファンにはおなじみの店で2007年に仙台に引っ越すまでは足繁く通っていて特に「Megの会」というジャズ愛好家の集まりは欠かさず顔を出していたものだ。今年の7月に会の進行役が変わるということで出席のお誘いを受けたが、たまたま上京する予定と重なったので何年かぶりで会に出席することになった。
 久々に顔を合わせる方々とさながら同窓会の様相であるがその会の世話役的な立場で長年サポートしているのがジャズレーベル「doLuck Jazz」の主宰者である平井清貴氏なのである。
 昔話など和やかに会話が弾む中、「今度doLuck Jazzからピアノトリオがリリースされるんだ。ピアノトリオというからには小山さんにも是非聴いて欲しい」ということで紹介して頂いたのがこの「宮下博行トリオ」だ。思いがけないところから紹介されたこのアルバム、アーティストにもなにかしらの縁を感じてしまうのだ。
 さて仙台に戻った後、さっそく覗いた音源ファイルの一覧を見てみた。この時点で知り得ている情報はリーダーの宮下博行さんの名前と収録予定の10曲の曲名のみ。曲順もまだ決まっていない段階だそうだが、ざっと見たところ5曲目の「Days of Wine and Roses」以外は知らない曲ばかりでかえって興味が増すばかりだ。できるだけ先入観なしにしておきたいのでアーティストのプロフィールも曲名もネットなどで調べないで音源ファイルを聴いてみた。
1. Horizon Suite
 明け方の地平線から上る朝日のように次第に熱を帯びる演奏はどこか希望に満ちた明るい未来を指し示しているようだ。
2. Tan Tan
 アルバム全体としてはちょっと違ったどこか陰のあるクールなテイストはジャズが持つ「かっこ良さ」がひしひしと伝わってくる感がある。この雰囲気好きです。
3. So That You May Relax
 優しい語り口のピアノの音色は文字通りのリラックスした雰囲気の曲だが、後半に進むにつれて盛り上がる演奏はいつのまにか耳を奪われてしまう訴求力の高さを感じる。
4. Brown Sketch
 とても穏やかで美しい曲。目を閉じればそぼ降る雨の街角の情景が浮かんでくるかのようだ。ヨーロッパの石畳の古街のようでもあり京都の古い町並みのようであり。
5. Days of Wine and Roses
 本アルバムでは唯一知っているスタンダード曲。スローな演奏イメージしがちだが予想外の軽快なテンポの演奏は新鮮で小気味良い。 6. The Way of Suggestion
 トラッドなジャズスタイルとは一線を画す繊細な旋律は昨今隆盛の欧州ジャズにに近い美的感覚を持った佳曲だ。
7. Like You, Like Me
 この曲と最後の曲では女性ボーカルが参加する。ボサノバ調の涼しげなスキャットと軽やかなピアノの音色は気だるい夏の日の午後にぴったりの曲だ。
8. Two This Plan
 どことなく思索的な奥深さも持ち合わせているような流麗なワルツは何のストレスもなくすっと心にすっと染入る実に美しい曲だ。
9. Mystic Encounter
 小刻みにリズムを刻むドラムとベース、それを一気に追い抜くようなドライブ感のあるピアノとの掛け合いが一振りのスパイスのように刺激的だ。
10. Love Will Stay
 ボーカルもバックの演奏も穏やかで美しいがそれだけではない決意の表れのような何事にも折れることのない力強さを感じる。
作品全体としては「Horizon Suite」や「Love Will Stay」に見られる明るい未来を展望させるような曲調と「The Way of Suggestion」や「Two This Plan」のような繊細な演奏にアーティストのスタイルが色濃く映し出されていると感じた。
 さてここまで書いたところでアーティスト情報と曲の情報を平井氏から頂いた。
 収録曲の内「Days of Wine and Roses」以外は全て宮下氏のオリジナル曲とのことで、多彩な曲作りのセンスが伺い知れることと”Favorite Pianist”にFred HershやLars Jansonが挙げられていることから作品に漂う欧州的な香りを理解することができたと思う。
 本ライナーの後に宮下氏からの曲解説が載せられるとのことなので自分が抱いた曲に対する感想と実際に作曲した方の曲に対する思いを答え合わせとは言わないまでも伺えることは有難い限りだ。
 正直申し上げればお恥ずかしながらこれまで宮下氏の作品は聴いたことがなかったが、今の自分の嗜好に近い作品に思いがけず出会えたことに対してdoLuck Jazz平井氏並びに素敵な作品を創りあげた宮下氏とメンバーの皆様に感謝申し上げたい。目に見えないご縁を頂 きありがとうございました。

曲解説 by Hiroyuki Miyashita
1. Horizon Suite
 ライブではよくやっていながら、オフィシャルのレコーディングされなかった、なんともう20年以上も前のセルフカバー曲。ファンの方々からの希望もあって今回収録しました。初演当時はフルートが入ったりしてましたが、後ヨーロピアンなテイストなTRIOでやっても色褪せない、ドラマチックな内容になったように思います。
2. Tan Tan
 僕が曲書く時はいろいろなシチュエーションがありますが、この曲は何か辛い時に書いた事は確かです。マイナーキーだからと言う訳ではなく、何も考えずに黙々と書き進めたらこうなったと言う訳で、そこからこの曲名にもなりました。クールでちょっとアメリカンな感じをお楽しみ下さい。
3. So That You May Relax
 くつろぐかもしれないように、というタイトル。長いからいつも略して”Relax”と呼んでます。リズムはゆったりした8Beat。実は嫁さんの誕生日にこっそり書いた楽しい曲ですが、今回ヨーロピアンな流れの中の緩和剤になればと選曲しました。
4. Brown Sketch
 幻想的な淡いバラード。関西で演奏した当初イメージを”BROWN”と、メンバーに言われ、この曲名に。書いた当時より、ちょっとダークにアレンジし直して収録。このトリオに合う感じに仕上がったように思います。
5. Days of Wine and Roses
 今回唯一のスタンダード曲。日頃歌手とのお仕事が多いと定番曲も多いから、いつの間にかりハーモナイズする楽しみも増え、その中でもインストで演奏する機会の多いこの曲を選んでみました。いい意味での裏切られ感のあるコード進行は新鮮ですが、結果アドリブの難敵?となりました。笑。 各メンバーのソロもフィーチャーしています。
6. The Way of Suggestion
 リズムはEven 8th. コード進行も、フレンチ、イタリアンあたりをちょっと意識した、いわゆる、ヨーロピアンなテイスト満載な曲。ちょっともの悲しい、優しさと美しさを感じてもらえたらと思います。イントロにアルコのBassも今回、僕が提案しました。
7. Like You, Like Me
 さわやかなボサノバのリズムを使って書いた曲。作品自体は古いトリオでの作品ですが、よくライブで一緒にやってた升本さんに、ある時、「歌詞のあるオリジナルが出来たから、いくつか歌ってほしい。」と提案したら、一曲はまさかの歌詞のないこの曲を選んでくれて、その語ライブでやる事になりました。今回升本さんが入る事になった時、僕は迷わずこれを依頼しました。美しいヴォイスのテーマとスキャットをフイーチャーしています。
8. Two This Plan
 二つの計画、とは、パートを部分に時間を分けて書いたから、そう命名しましたが、基本ちょっと物悲しい、ヨーロピアンなゆったりしたワルツ。今回の収録曲では一番最近に書いた物。その時のマイブームは3拍子でした。
9. Mystic Encounter
 神秘な出会いというタイトル、スペイシーなヨーロピアンテイストが出ればと思い、最初は大好きな、ポーランドのM.ボシレフスキーとかを意識してスペイシーなEven Feelで書いてましたが、このトリオではハードなスイング風に変更。フィーチャーした田村氏のバランス感あるドラミングにご注目。決して軟派には終わらない仕上がりになりました。
10. Love Will Stay
 最初 The Best Song to Youというタイトルで大晦日に思い立って書いたロマンチックな3拍子のバラード。トリオでやってたところ、ふとした所から小学校で「この曲を児童に歌わせたい。」と先生からの依頼が。その後、その方の知人経由で、S.Atkin氏が素晴らしい歌詞を書いていただき、このタイトルになりました。その後は、おかげさまで、いろいろなジャズシンガーさんにも取り上げてもらってますが、東京でもこの曲を一緒にやっていた升本さんに、今回お願いしてCDに収録。美しくシンプルイズベストな仕上がりと思います。最後まで聴いてくれた方々への感謝の思いを込めて、僕にとっても感動のCDのクロージングになりました。
 このCDを聴かれた皆様、是非またライブにも足をお運び頂けたら幸いです。